「美しい日本の残像」アレックス・カー

美しき日本の残像 (朝日文庫)
 飛騨高山に1日滞在して思ったのは、「日本の文化って死んでるんだな」ってこと。町並み保存通りは、人多杉で、一歩中にはいるとどこにでもあるフツーの土産物屋。保存されている民家に入ると、中は蛍光灯でこうこうと照らされてて、受付のおばちゃんは昼ドラを見ている。雰囲気読め!(せいぜいAMラジオまでだろ!)。名物・名産は、職人さんの存在が感じられず、とってつけたような感じ・・・1番おもろかったのが碁会所という始末(ヒカルの碁の絵が一面に。しかも微妙に似てなくてお前誰だ状態)。
 ・・・かろうじて、日が落ちて観光客がはけた後の町並み保存通りだけは、まだ良かった。障子からもれる光が幻想的だった。


 外国の本って、しょっぱなからガンガン説教を始めたりして、すごくすがすがしい。インテリアの本が「物を捨てられないのは、物を大切にしているのではなく、その物が必要な物かどうか判断するのをなまけているだけなのです」と始まると、逆にやる気がでてくる。この本も、言い切りが大変気持ちいい本。

日本人に広く読まれている「日本人論」はたいてい論調がアグレッシヴで、そのほとんどが日本または日本人の優越性を訴えるものになっている。
そのような本の影響を深く受けて、多くの日本人は、

  • 日本語は世界一難しい言語であり、表現力はずばぬけて豊か
  • 日本の自然は世界一美しい

とか事実の裏付けのあまり無いことまでを信じる結果になっている
〔対して、中国にはあまり「中国人論」がなくて明るい雰囲気。これはつまり、中国人は中国が世界の中心であることを確信しているから。対して日本人の心の底には自分の国に対する不安がたえずつきまとっているのではないか、と。(要約)〕

いや、まさに自信がないんだろうね。・・・やっぱり西洋に比べて、自分の寄って立つところを言語化することが苦手だから、ランキングで1位にならないと安心できないんだよね。ガキの国。

日本人は、現実と関係なく教えられた事項をいつまでも信じ切っている。

  • 例:日本は世界唯一四季のある国。

あと、私はここに

というのも入れたい。*1

今、お上が教育基本法を変えようとしてて、「日本の文化を愛せよ!」とか入れたいとか。まさに上に書いてある状態がますますひどくなると。鬱。

「今、日本文化がいかに死に体か」こそを社会科や美術で教えなならんやろ!

 「日本は完全に蛍光灯に汚染されてしまっている」

家庭科や美術で、まさにこういうことを教えればいいのに!


あと、もう一つのツボが落武者。落武者伝説大好き★

屋久島には、言い伝えがある。「平家がこの島にやって来たとき、この島にいた先住民と闘いがあって、ずいぶん人が亡くなった。それで、平家の侍が刃向かう先住民を舟に乗せて、その舟の底を抜いて海に沈めた」


で、最初にいたのはアイヌ(縄文遺跡があり、「モッチョム(アイヌ語で静かなる森と瀧の意)岳」という山がある)、次に大陸からいろんな民族が。そして、平家がやって来た。


屋久島は周囲100キロの島だけれど、地域によって住んでいる人の顔に特徴がある。西側の永田周辺は端正な醤油顔だけれど、東側の宮ノ浦の方はくっきりした南方系の顔の人が多い。それもきっと、この島に入って来た人々の棲み分けの歴史ゆえなのかもしれない。(これは、田口ランディメルマガより要約)

す☆ごーい!

 身近なところでは、昔の同僚に能登半島の先端出身の子がいて、名字は「大兼政」。その地域ではそんな感じの大仰な名字の人が多くて、まさに平氏の落武者の末裔だそうで。なるほど。まさに奥地に逃げ込んだんだな、と納得(金沢市から能登の先端まで車で3時間)。
 もっと身近な所では、通勤途中にある、奥まった集落への分岐点を見るたびに、「こんな奥地に住もうとするなんて、落人に違いない」と想像をふくらましてしまう。

 この本にある祖谷も、平家の落人の集落だそうで。で、「祖谷弁」を話すのですが、これがすごい。関西弁、四国弁、そして平安文法(「たもれ」「いぬる」「ぞ」)とかが混在しているそうで、70年代に平安文法を使う人がいたなんて!奥地でタイムカプセルのように平安文法が、そして平安文化が保存されてるなんてすごい!と思うのです。

つづく。

*1:「痛快!憲法学」小室直樹著より