痛快!憲法学 小室直樹

 「民主主義はいかに生まれたか」、そんでもって、「日本は民主主義が生きていると言えるのか?」「その民主主義をkeepする道具である『憲法』は生きているのか?」について書いてある本。
 「民主主義はいかに生まれたか」の部分では、「人権」「議会」「平等」「契約」「資本主義」がどうやって生まれたのかについて書いてある。その成り立ちが面白い。「人権の始まりは特権」!「議会の始まりは『特権・利権死守暗黒会議』」!!という逆じゃんシリーズや、キリスト教シリーズ。「『平等』『契約』『資本主義』もキリスト教生まれのキリスト教育ち。だから、世界上で宗教無しにそれらがkeepできている国なんてほとんどない」だとか。
 うわー、世界史って面白かったんだ!こういう風に教えてくれれば良かったのに・・・おい文部省!世界史まともに教えろよ!公民まともに教えろよ!・・・むしろこれを公民の教科書にしよう!。*1と言い出したくなるくらい面白かった。寝る間が惜しかった。
 タイムリーなのは「平和主義者こそが戦争を生む」という章。平和憲法が日本にしか無いというのは大ウソで、世界の2/3が平和憲法を持ってる。さらに「国際紛争解決の手段としての戦争を放棄」という文章ですら、世界で7カ国が持っている。さらにさらに、「国際紛争解決の手段として・・・」って条項は第一次世界大戦前は国際連盟のほとんどの国が批准してた。
 つまり、そんな憲法があったって、第二次世界大戦は起こった。ヒトラーの前に無力だった。むしろ、「戦争絶対反対」「平和一番」「とにかく戦わなければなんでもよし」「戦うくらいならヒトラーの無茶にも目をつぶってやろうぜ」という平和主義者こそが戦争を生んだんだ、と。ひえー。
 戦争を抑止するには、徹底的に「戦争がなぜ起こるのか」を研究しなくてはならない。戦争屋を止めようと思ったら戦争屋の事を知り抜いていないといけない。譲歩せずに駆け引きしないといけない。ヒトラーの危なさを見抜いたのは戦争大好きチャーチルだったし、キューバ危機で危機一髪戦争にならなかったのは卒論で軍事のことを書いてたケネディだった。
 で、今の日本だ。軍事学のコースのある大学はないし、戦争の研究をした政治家もいない。防衛大学校(プロ)まかせ。で、「9条さえ守ればOK」という空気が圧倒的 ・・・うわー、ア・ブ・ナ・イ!
 てゆうか、9条なんてとっくに死んでるよ。米軍に燃料補給している時点でアウト。立派な戦争参加。「9条を守れ」?死んでいる憲法を守れ?「9条の精神を世界に広めていこうぜ」?(゜Д゜) ハア?? で、この本では、むしろ9条を良い方に改憲するべきでは?米国になあなあにならないように国連を基準に考えてみては?と書いてあります。
 
 この本を読んでから、9条関係の意見をウォッチしているんだけど、だーれも、ここまで言及してない。・・・最初は「みんな分かってねー(自分だって読むまで分かってねー)」と呆れてたんだけど・・・最近じゃ、ここまで誰もこのことに触れないとなると、逆にこの本が書いてあることが間違ってるんだろうか・・・って思い始めてたんだよね。
 そしたら今日朝の朝日新聞に、藤原帰一さんが書いてるじゃないの!「イデオロギーだけじゃ戦争は止められないんだよボケー 具体的に戦争を止める技術身につけろよ(意訳)」と! はー。援軍を得た。

*1:ま、実際そうは絶対ならないんだけどね。なぜなら文部科学省の官僚こそが国民を無知のままで据え置きたいだろうからね・・・。だってこの国は「人民の人民による人民のための・・・」でなく「官僚の官僚による官僚のための国」になっちゃってるんだから。わぁお。