西洋音楽史 岡田暁生 『』内は引用。

音楽+西洋史(+美術史)、という感じで歴史好きにはたまらない一冊でした。
クラシック=『独仏伊芸術音楽 (P10)』。 『世界最強の民族音楽 (Pviii)』。 クラシックが他の民族音楽を駆逐していったのは、西洋科学が他の思想・文化を駆逐していったことに近い気がする。 バッハが凄いのはファラデーが凄いのと同じイメージ。



16C以前 神のための音楽 〜『石造りの境界の建物全体が音を立てて振動する感覚』とともに〜


17C〜18C半 バロック 王のための音楽 〜『目も眩むような装飾の中で』〜


18C半〜 知的階級のための音楽

  • 18C半 古典派
    • ベートーヴェンはメロディーは凡庸だけど、オケが小編成でも力強いのと、大風呂敷を広げて畳むことが出来る(漫画家で言うと最終回まで引っ張れる)のが凄いらしい。
  • 19C ロマン派 いっぱいいる。略。

19Cに変わったこと『西洋音楽史』より要約

  • 18Cまでは現代音楽しか演奏してなくて、(原則として数度演奏されたらそれで終わりの消耗品。今のポピュラー音楽に近い)
  • 19Cに過去の音楽と現代音楽を演奏するようになって、
  • 20Cになったらもっぱら過去の音楽しか演奏しなくなった。
  • 18Cまで、音楽の勉強=作曲の勉強、だった。独奏者はみんな自作自演だった。
  • 19Cから、音楽の勉強=楽器演奏の勉強、になった。もっぱら他人が作った作品ばかりを演奏する「演奏家」が誕生した。
  • 19Cに音楽批評が始まり、「後世に残すべき名作を選定」するようになった。「バッハやベートーヴェンの横に並べても恥ずかしくない『不滅の名作』を書かねば」という使命感が芽生えてくる。・・・これは大変なプレッシャーだったはずである。・・・破棄・・・・恐ろしく時間がかかる・・・過剰な気負い。作曲家は寡作になった。
  • 19Cにクラシックの大衆化が進む。「あなたも弾けるお手軽感動系クラシック」の誕生。乙女の祈り、タイスの瞑想曲、グノーのアヴェマリア
  • 19C半 ロマン派の爛熟と崩壊

 あくまで古典派からの流れの中に居続け、その中での最大限を目指すワーグナーマーラー(ドイツ)
 vs 視野を広げて古典派以前も民族音楽もキャバレー音楽も黒人音楽もジャズも取り入れちゃえ。ラヴェルドビュッシー(フランス)

      • 昨日の世界ふしぎ発見!「狂王 ルートヴィヒ2世と3つの城」。城がグロテスクで密度が濃くって、ぜひ生で観て胸焼けしたいと思った。 普通、英雄譚に憧れても、絶対王政の豪華絢爛に憧れても、まあ実現できずにあきらめていくもの。 だけど彼の場合なまじっか城建てられちゃった、ワーグナーパトロンになれちゃった・・・と中途半端にできてしまったからこそ、ついぞ現実に戻ることができなかった感じ。 ルイ14世には血税ものともせず美学にまっしぐらな仲間がいっぱいいたけど、彼に精神的についてきた人は居ない。 独り言の英雄譚、一人で絶対王政ごっこ。お金で雇った従者と夜な夜な饗宴。 そんな舞台の城を「素敵!メルヘン!」って言えるミステリーハンターの頭の中がラストミステリー。
      • マーラーと同時代ならディーリアスももっと評価されていいんじゃないかと思ってしまう。やたらエモーショナルなのに曲展開が読めない曲! ずーっと観たかったケン・ラッセルが作ったディーリアスのTVドラマ「song of summer」http://jp.youtube.com/watch?v=4Vyk7Gt5QtEyou tubeに上がってて感激。曲を口述筆記することがこんなに大変だとは。 あんな身体になってなお頭の中に「夏の歌」があったディーリアスも凄い。超乙。

とはいえロマン派もまだまだ根強い。ポピュラー音楽はロマン派の末裔。リズムも調性も同じ。「市民に夢や感動を与える」というコンセプトも同じ。



この流れで言えなかった好きな作曲家。


クラシック参考リンク

*1:映画「カストラート」の歌声は合成の声。役者は口パクしている。